彼が高校時代、朝日新聞に連載していた検事総長 伊藤 栄樹氏の「秋霜烈日」を読んでいて、特に石油連盟のヤミカルテルに検察の捜査が入った事件を記憶していた。この連載は63年5月4日から32回にわたり掲載された、とあとがきにある。
私はこの著書の中でアリバイを崩した一枚の切手の事件がとても印象深い。内容は詳しく記憶していないが、被疑者の主張するアリバイのハガキに貼った切手から、その切手が使われ始めた月日(販売開始)と主張する月日の矛盾を付きアリバイを崩したものだ。過日、バラエティ番組なのだが、時として犯罪をドキュメントタッチで構成する内容を放送するのですが、今回唸ったのが、国民に衝撃を与えた外務省職員の汚職(横領)事件で巨額の金銭をちょろまかしていた訳です。これは検察ではなく、警視庁の捜査2課の刑事の活躍なのですが、横領している外務省職員の取り調べで、預金通帳入金の際に足がつくのを恐れ、全て現金で入金していたのです。
刑事はたった一回の取り調べのチャンス(恐らくは外務省も汚職に気が付き、この職員を海外勤務辞令を発令したので、この取り調べで自白させないと逮捕は不可)をものにした。職員は現金の入金を父親の遺産を現金にして自宅で保管していたが、今回銀行に預けた、と主張した。相続税の申告していないので罪になるがこちらも時効成立している。
この主張に反証する証拠はなにもないのだ。しかし、しかしである。刑事は数億の税金(外務省予算とふざけた事に官房機密費にも手をつけていたのだ)横領している職員が銀行の窓口の女性を愛人にして、彼女を指名して現金を預けており、この職員取り調べ以前に女性の聴衆を終え『いつも現金で帯はされていない一万円札を風呂敷で持参していた』と証言していたのだ。
さて、刑事が職員が遺産だった、と言ったときにピーーンときたのだ。すぐさま職員に向かって「おかしいだろぅ、お前さんの持ち込んだ一万円札は全て福沢諭吉の札で、お前さんの言う父親の遺産(既に父親の死亡年月日は調べ済み)の札なら聖徳太子だろう」コレで職員は落ちた。そう、福沢諭吉翁の画ずらが一万円札として発行されたのは、父親が死亡してから数年後だったのだ。ノンフィクションでしかも外務省ノンキャリ官僚の事件だけに見応えもありました。
・・・議会は犯罪、事件を審議、議論はしない。当たの前ですが、時として議会人が犯罪、事件の当事者となる場合はある。しかし、物事の見方は分野は違うのですが、理事者提案の議案に対し、どんな見方で正しいのかを判断するのがベストなのかを訓練する意味で私には、法廷もののドラマ、映画、そして書籍などが大いに役立っています。秋霜烈日を誇りとして、日本の検察官には一層、悪は眠らせない、でガンバッテ欲しいものです。